第20話:失ったものと向き合う現実

失ったものと向き合う現実

幸いなことに、家は手放さずに済みました。
今のマンションは、ずっと以前にローンを完済しました。

そういう意味では、生活の土台は残っている。
それは、間違いなく救いでした。

ただ――

マンションの暮らしは、どこか「閉じたもの」に感じることがあります。

外に出る理由が少ない日は、
一日中、家の中で過ごしてしまうこともある。

そんな時、ふと思うのです。

「庭があったらなあ」と。

土に触れる場所があったら、
もう少し違う時間の流れを感じられるのではないか――
そんなことを考えます。

ベランダに時々、植木鉢の花を置いたり、以前はブルーベリーの苗木を置いたりもしました。
今の夜になるとベランダから空を見上げることもあります。

振り返れば、若い頃は
集合住宅に何の不満もありませんでした。

むしろ、一戸建てを持ちたいと
強く思ったことすらなかった。

なぜなら、心のどこかで
「いずれは晴耕雨読の暮らしをする」と決めていたからです。

仕事を終えた後は、
自然の中で、静かに過ごす。

そんな老後を、当たり前のように思い描いていました。

しかし今は、現実を受け入れながら
この場所で、妻と二人で暮らしていくことを考えています。

ここでの生活も、決して悪いものではありません。

それでも――

「もう無理だ」と完全に夢を諦めたわけではありません。

いつか。

もし可能であれば、
このマンションを手放し、郊外や地方へ移り住む。

そんな思いが、今も心のどこかに残っています。

もっとも、この場所には
孫たちとの思い出もあります。

だから、本当は手放したくない――
そんな気持ちも、同時に存在しています。

現実と願いのあいだで、
揺れながら過ごしているのが、今の自分です。

それでも時折、
ネットで郊外や地方の不動産情報を眺めている自分がいます。

もしかしたら――という思いを、夢を
完全には手放せないでいるのだと思います。

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