幸いなことに、家は手放さずに済みました。
今のマンションは、ずっと以前にローンを完済しました。
そういう意味では、生活の土台は残っている。
それは、間違いなく救いでした。
ただ――
マンションの暮らしは、どこか「閉じたもの」に感じることがあります。
外に出る理由が少ない日は、
一日中、家の中で過ごしてしまうこともある。
そんな時、ふと思うのです。
「庭があったらなあ」と。
土に触れる場所があったら、
もう少し違う時間の流れを感じられるのではないか――
そんなことを考えます。
ベランダに時々、植木鉢の花を置いたり、以前はブルーベリーの苗木を置いたりもしました。
今の夜になるとベランダから空を見上げることもあります。
振り返れば、若い頃は
集合住宅に何の不満もありませんでした。
むしろ、一戸建てを持ちたいと
強く思ったことすらなかった。
なぜなら、心のどこかで
「いずれは晴耕雨読の暮らしをする」と決めていたからです。
仕事を終えた後は、
自然の中で、静かに過ごす。
そんな老後を、当たり前のように思い描いていました。
しかし今は、現実を受け入れながら
この場所で、妻と二人で暮らしていくことを考えています。
ここでの生活も、決して悪いものではありません。
それでも――
「もう無理だ」と完全に夢を諦めたわけではありません。
いつか。
もし可能であれば、
このマンションを手放し、郊外や地方へ移り住む。
そんな思いが、今も心のどこかに残っています。
もっとも、この場所には
孫たちとの思い出もあります。
だから、本当は手放したくない――
そんな気持ちも、同時に存在しています。
現実と願いのあいだで、
揺れながら過ごしているのが、今の自分です。
それでも時折、
ネットで郊外や地方の不動産情報を眺めている自分がいます。
もしかしたら――という思いを、夢を
完全には手放せないでいるのだと思います。

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