第15話 なぜ引き返せなくなるのか

第15話なぜ引き返せなくなるのか

分かっていても止まれなかった理由

「おかしい」と思った瞬間は、確かにありました。

でも私は、その違和感にフタをしました。
なぜなら、ここまで信じてきた自分を否定するのが怖かったからです。

第14話では、人がどのように「信頼してしまうのか」を書きました。
そしてその先にあるのが――

「引き返せなくなる心理」です。

■ 小さな違和感は、最初からあった

最初から完璧に信じていたわけではありません。

・話が少し出来すぎている
・お金の話が急に出てくる
・やり取りのどこかに違和感がある

今思えば、いくつもサインはありました。

でも当時の私は、それをこう解釈していました。

「きっと自分の考えすぎだろう」
「疑うなんて相手に失礼だ」

こうして、違和感は見て見ぬふりをされていきます。


■ 投じたお金が判断を狂わせる

一度お金を払うと、人は変わります。

「ここでやめたら損になる」
「もう少しで取り戻せるかもしれない」

そう考えてしまうのです。

本当は、この時点で止まるべきでした。
しかし人は――

失ったものを取り戻そうとするほど、深みにハマる

この心理から逃れられません。

最後にお金を振り込む、その日の朝。

「これを振り込んだら、財産がほぼ無くなる」
そう分かっていました。

それでも――

振り込まなければ、お金は引き出せない。
何としても取り戻さなければならない。

その思いの方が、はるかに強かったのです。


■ 「自分は大丈夫」という思い込み

もう一つ大きかったのは、これです。

「自分だけは騙されない」

誰もがそう思っています。
私も例外ではありませんでした。

だからこそ、

・疑う自分を否定し
・相手を信じる理由を探し
・都合の悪い情報を無視する

そんな行動を無意識に繰り返していました。


■ 引き返すには“勇気”が必要だった

今なら分かります。

引き返すのに必要なのは「判断力」ではなく、
“勇気”でした。

・ここまでの時間を無駄にする勇気
・払ったお金を諦める勇気
・自分の間違いを認める勇気

これが、当時の私には足りませんでした。


■ なぜ人は止まれないのか

まとめると、人が引き返せなくなる理由は3つです。

  1. 小さな違和感を無視してしまう
  2. 投資したお金が判断を縛る
  3. 自分は大丈夫という思い込み

この3つが重なると、人は簡単に抜け出せなくなります。


■ 今だから伝えたいこと

もし今、

「少しおかしいかもしれない」

そう感じている人がいたら――

その感覚は、ほぼ正しいです。

そして、

「まだ大丈夫」と思っているうちに止まることが、何より大切です。

被害は、止まった瞬間にそれ以上は増えません。


■ 次回予告

では、なぜ詐欺師はここまで人の心理を操れるのか。

次回は――
「詐欺師はどのように人の心をコントロールするのか」

その手口の裏側を書いていきます。

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