カテゴリー: 体験記

  • 第13話 なぜ人は騙されるのか

    第13話 なぜ人は騙されるのか

    ロマンス詐欺の心理


    はじめに

    「なぜ自分は騙されたのか」

    被害に遭った後、何度もそう考えました。

    冷静に考えればおかしいことも、
    その時はまったく疑えなかったのです。

    でも、今はこう思っています。

    騙されたのは、判断力がなかったからじゃない

    あれは、人として自然な流れだったんだと。


    人は誰でも騙される可能性がある

    ロマンス詐欺は、特別な人だけが騙されるものではありません。

    むしろ

    • 真面目な人
    • 人を信じる人
    • 普通に生活している人

    むしろ、そういう人ほど狙われます

    自分も、まさにそうでした。


    当時の自分の状態

    当時の自分のこと

    今振り返ると、正直に言えば

    少し自惚れていたと思います

    老後資金もあり、
    晴耕雨読のための移住先として家も購入していました。

    年金に加えて仕事もしていたため、
    資産は減るどころか、むしろ増えていました。

    株式投資も順調でした。

    自分はうまくやっている。人生は順調だ。
    どこかで、そう思っていたのです。

    それでも――

    節約の生活は続けていましたし、
    体もまだ動く。

    不自由はないはずでした。

    でも、今振り返ると

    どこか満たされていない気持ちがあったのかもしれません。

    その“わずかな隙”に、入り込まれたのだと思います。


    詐欺は「心理」を利用している

    詐欺師は、偶然に騙しているわけではありません。

    人の心理を理解し、順番に仕掛けてきます。


    ■ ステップ① 親近感を作る

    優しい言葉
    共通点を強調
    毎日のやり取り

    「この人、いい人だな」と思ってしまう


    ■ ステップ② 特別感を与える

    「あなただけ」
    「出会えてよかった」

    自分が特別な存在のように感じてくる


    ■ ステップ③ 未来を見せる

    「一緒に豊かになろう」
    「将来のために」

    気づけば、“未来の話”をしている


    ■ ステップ④ 判断力を鈍らせる

    そして、

    最初は少額から始まります。

    「利益が出たよ」と言われると、

    「あれ?本当に大丈夫かも」と思ってしまう

    こうやって、少しずつ疑う気持ちがなくなっていきます。


    なぜ気づけなかったのか

    一番の理由はこれです。

    信じたかったから

    うまくいってほしい
    この人を信じたい
    自分は間違っていないと思いたい

    その気持ちが強くなると、

    おかしいことも、おかしいと思えなくなる

    今なら、よく分かります。


    騙されたのは弱さではない

    ずっと思っていました。

    「自分が悪かったんだ」と。

    でも今は、少し違う考えです。

    あれは、人として自然な反応だった

    だからこそ、

    誰でも同じ状況になれば、騙される可能性がある

    そう思っています。


    じゃあ、どうすればいいのか

    特別なことじゃありません。

    感情が動いたときほど、一度止まること

    ・急に距離が近くなったとき
    ・お金の話が出たとき
    ・LINEなど外に誘導されたとき

    その時点で「一回考える」

    それだけでも、かなり違います。


    まとめ

    ロマンス詐欺は、

    人の弱さにつけこむというより
    人の気持ちをうまく利用してくる犯罪です

    だからこそ

    知っているかどうかで結果が変わります

    私は「ロマンス詐欺」言葉すら知りませんでした。

    次回予告

    次回は、

    なぜ人は簡単に信頼してしまうのか

    「親近感」や「共感」がどう働くのか、
    もう少し具体的に書いてみたいと思います。

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  • 第12話【総まとめ】ロマンス詐欺の実体験–被害から回復まで

    第12話【総まとめ】ロマンス詐欺の実体験–被害から回復まで

    はじめに

    私は数年前、ロマンス詐欺の被害に遭いました。
    当時は「まさか自分が」と思っていましたが、結果として大きな損失と精神的ダメージを受けました。

    このページでは、

    • 被害の全体像(実体験)
    • 詐欺の典型的な手口
    • 被害後に取るべき行動
    • 回復までの過程

    を、実体験ベースでまとめています。

    「同じ被害を防ぐために」必ず知ってほしい内容です


    被害の全体像(時系列まとめ)

    私の体験は、大きく以下の流れで進みました。

    ① 出会い(信頼の形成)

    SNSやメッセージアプリで接触
    親しみやすい会話で距離を縮めてくる
    恋愛感情・信頼関係を作られる

    この段階では「詐欺」と気づくのは非常に難しい


    ② 投資・送金の誘導

    「将来のため」「一緒に豊かになろう」といった言葉
    少額から始まり、徐々に金額が増える
    専用サイトや担当者の存在で安心させる

    「LINE誘導」「複数アカウント」は典型的な手口です


    ③ 違和感と不安

    出金できない
    追加資金を求められる
    話の辻褄が合わなくなる

    ここが“気づける最後のタイミング”です


    ④ 被害の確定と絶望

    連絡が取れなくなる
    お金が戻らないと確信
    強い後悔と自己否定


    ⑤ 警察・相談

    被害届の提出
    しかし返金は極めて困難
    精神的なダメージが大きく残る


    ⑥ 回復までの道のり

    睡眠障害や不安
    少しずつ日常を取り戻す

    今、ようやく落ち着いてきました


    ロマンス詐欺の特徴(必ず知ってほしい)

    今回の経験から、強く感じた共通点です。

    ■ 甘い言葉は危険

    「必ず儲かる」
    「あなただけ」
    「将来のため」

    「簡単に稼げる話」は疑うべきです


    ■ LINEなど外部アプリへ誘導

    最初は普通のやり取り
    徐々に別のアプリへ移動

    詐欺では非常に多いパターンです


    ■ URL・サイトが怪しい

    本物に似せた偽サイト
    長くて不自然なURL

    少しでも違和感があれば絶対に入力しないこと


    被害に遭ったらやるべきこと【重要】

    もし今、不安に感じている方へ。

    ① すぐに送金を止める
    ② 証拠を保存(LINE・メール・振込履歴)
    ③ 警察・消費生活センターへ相談
    ④ 家族に打ち明ける

    一人で抱え込むのが一番危険です

    ※ただし解決方法をネットで探さない、
    お金が戻ると誘うサイトは要注意です。


    私が伝えたいこと

    この体験を通して、強く思うことがあります。

    ■ 誰でも被害者になり得る

    特別な人だけが騙されるわけではありません。
    普通に生活している人ほど狙われます。


    ■ 恥ずかしいことではない

    私は当時、人に話せませんでした。
    でも今ははっきり言えます。

    悪いのは「騙す側」です


    ■ 経験は無駄ではない

    この出来事を通して

    • お金の大切さ
    • 人との関わり方
    • 情報の見極め

    を学びました。


    今、少しずつ回復してきた

    まもなく3年が経過します。
    完全に元通りではありません。
    今でも時々思い出します。

    それでも——
    少しずつ前を向けるようになってきました。


    最後に(皆さんへのメッセージ)

    ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

    今回の体験は、すべて一冊の本としてまとめました。

    ブログでは書ききれなかった経緯や、
    なぜ気づけなかったのか、
    なぜ止まれなかったのかも含めて記録しています。

    もし、もう少し詳しく知りたい方や、
    同じような状況にいる方の参考になればと思います。

    Kindleで公開しています。

    もしこのページを読んでいるあなたが

    不安を感じている
    誰かに相談できずにいる

    そんな状況にあるなら、どうか覚えておいてください。

    「違和感」は間違っていません
    「一度立ち止まる勇気」が大切です


    次のステップ

    この後は、

    「なぜ人は騙されるのか」
    「どうすれば防げるのか」

    について、実体験をもとに解説していきます。


    関連記事(体験談一覧)

    第1話:Facebookの一通のメッセージ
    第2話:投資の話が出てきた日
    第3話:LINEへの誘導
    ・・・・
    ・・・・
    第11話:少しずつ回復してきた今

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  • 第11話(後編)少しずつ回復してきた今

    第11話(後編)少しずつ回復してきた今

    失われた夢と、それでも続く人生

    眠れない夜もありました。

    処方された睡眠導入剤。

    週に4日、5日と頼る日々が続いていました。

    正直、
    薬に頼ることへの不安はありました。

    それでも――
    眠れないことの方が、つらかったのです。

    そんな状態が続きましたが、
    少しずつ変化もありました。

    昨年11月頃から、
    薬を使わなくても眠れる日が増えてきました。

    完全ではありません。

    それでも、
    「あの頃」とは違うと感じています。

    GABAのサプリを試したこともあります。

    効果があったのかどうかは分かりません。

    ただ、
    何とかしたいという気持ちは、ずっとありました。

    この3年で、
    貯蓄もわずかに増えました。

    本当に、わずかです。

    口座の資産グラフを見ると、
    2023年6月から急落しています。

    それを見るたびに思います。

    ここが、自分の人生の落とし穴だったのだと。

    それでも今は、
    健康を維持することを大切にしています。

    休日には、体を動かす。

    水泳、自転車、
    天気が悪ければジムでエアロバイクやランニングマシン。

    特に、自転車で坂道を登るとき。

    その瞬間だけは、
    頭の中が無になります。

    何も考えずにいられる、
    貴重な時間です。

    以前、好きで見ていた
    「こころ旅」という番組があります。

    その中で聞いた言葉を、時々思い出します。

    「人生、下り坂が最高」

    皮肉なことに、
    私にとっては、

    「最悪の人生の下り坂」になってしまいました。

    それでも――

    止まるわけにはいきません。

    一歩ずつでも、進むしかない。

    そう思っています。

    本当は、夢がありました。

    郊外に家を持ち、
    晴耕雨読の生活をすること。

    実は2023年の春、
    その夢に手が届きかけていました。

    物件を見つけ、契約も済ませていました。

    引き渡しは、2023年6月末。

    しかし――

    その直前に、詐欺で資金を失いました。

    購入は、できませんでした。

    不動産会社に事情を説明しましたが、
    契約解除には違約金が発生しました。

    最終的には、減額と分割に応じてもらい、
    約1年かけて支払いました。

    あの時は、必死だったのだと思います。

    結果として、
    その夢は遠のきました。

    それでも――

    今でも時々、
    地方の物件を検索することがあります。

    完全に諦めたわけではありません。

    ただ、
    残された時間との相談にはなってきました。

    それでも私は、

    自分の人生を、
    少しずつでも前に進めていきたいと思っています。

    でもまだまだ回復途中、今でも眠れない夜がやってくることがあります。

    (第11話 終わり)

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  • 第11話(前編)少しずつ回復してきた今

    第11話(前編)少しずつ回復してきた今

    失った老後資金と向き合う現実

    詐欺被害から、まもなく3年が経過します。

    過ぎてしまえば、早いものだと感じます。

    では――
    あの時と今で、何か変わったのか。

    正直に言えば、
    簡単に割り切れるものではありませんでした。

    被害に気づいた直後。

    弁護士とのやり取り、返金への期待、
    警察への被害届。

    あの頃は、ただ必死でした。

    でも――
    本当に苦しかったのは、その後だったのかもしれません。

    失った金額の大きさ。
    そして、「本当になくなった」という現実。

    それを受け入れることが、できませんでした。

    1週間だったのか、1か月だったのか。
    時間の感覚すら、曖昧です。

    ふと口座を見て、
    残った金額を確認したとき、

    じわじわと、不安が押し寄せてきました。

    これは老後資金だった。

    そう思った瞬間から、
    現実の重さが、のしかかってきました。

    手元にあった定期預金。

    10年満期で、約200万円。
    これを解約しました。

    満期前の解約だったため、
    戻ってきた金額は、それを下回っていました。

    それでも、
    少しでも手元にお金を残したい。

    そう思うしかありませんでした。

    本来なら、
    私はその年にリタイアする予定でした。

    けれど――
    やめるわけにはいかなくなりました。

    仕事は続けるしかない。

    少しでも貯蓄を増やすために。

    そして今も、働いています。

    幸いにも契約は延長され、
    「とりあえず1年」

    そう自分に言い聞かせながら、日々を過ごしています。

    できる限り年金には手をつけず、
    貯蓄に回す。

    そんな生活を続けています。

    大きく取り戻すことはできない。

    でも――
    少しずつでも、戻していくしかない。

    そう思いながら。

    第11話(前編)終わり
    後編へ続く

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  • 第10話 (後編):それでも少しずつ

    第10話 (後編):それでも少しずつ

    睡眠導入剤との向き合い

    睡眠導入剤を飲み始めました。

    できるだけ頼らないようにしよう。
    そう思っていましたが、現実はそう簡単ではありません。

    週に4〜5回は、薬に頼っていました。


    少しずつ減らしていく日々

    それでも私は、
    少しずつ回数を減らすことを意識しました。

    「今日は飲まずに寝てみよう」

    そんな日を、少しずつ増やしていきました。

    時間はかかりました。
    すぐに良くなることはありませんでした。


    変化が訪れた時期

    それでも――

    2025年11月頃から、
    薬に頼らず眠れる日が増えてきました。


    何も解決していない現実

    何かが解決したわけではありません。

    お金が戻ったわけでもない。
    状況が好転したわけでもない。


    それでも変わったこと

    それでも、確実に変わったことがあります。

    それは――
    自分の気持ちです。

    あの頃は、
    自分を責めることしかできませんでした。

    しかし今は、
    少しずつ受け入れられるようになってきました。


    取り戻せなかったもの、取り戻したもの

    私は結局、何も取り戻せませんでした。

    それでも――
    少しずつ、日常を取り戻しています。


    同じように苦しんでいる方へ

    眠れないほど苦しかった日々も、
    時間とともに、少しずつ和らいでいきました。

    同じように苦しんでいる方がいるなら、
    伝えたいことがあります。

    時間はかかります。
    でも――少しずつ楽になります。


    第10話おわり

    (第11話へ続く)

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  • 第10話 (前編):眠れない日々

    第10話 (前編):眠れない日々

    被害届を提出してから、
    私は何もできずにいました。

    やるべきことは、もうない。
    そう感じていました。

    結局――
    その後は何もせず、時間だけが過ぎていきました。

    いわゆる「泣き寝入り」です。

    悔しさも、不安も、後悔もある。
    それでも、どうすることもできない。

    だから私は、
    気持ちの整理を「時間」に任せるしかありませんでした。

    本当は、前を向こうとしていました。
    これ以上引きずらないように。
    日常に戻ろうとしていました。

    けれど――
    ふとした瞬間に思い出してしまうのです。

    「あの時、なぜ気づかなかったのか」
    「どうすれば防げたのか」

    考えても答えは出ないのに、
    同じ後悔が、何度も頭の中を巡る。

    そして、もう一つ。
    消えない思いがありました。

    家族に迷惑をかけてしまったこと。

    その現実が、
    何度も心に突き刺さりました。

    2024年9月頃から、異変が起きました。

    夜、眠れない。

    布団に入っても、なかなか寝付けない。
    ようやく眠れても、
    夜中に何度も目が覚めてしまう。

    頭の中では、同じことが繰り返されていました。

    「あの時、なぜ気づかなかったのか」
    「どうすれば防げたのか」

    耐えきれず、内科を受診しました。

    ただ――
    詐欺のことは話しませんでした。

    「眠れないんです」

    それだけを伝えました。

    医師は言いました。
    高齢になると、眠れない人は多いと。

    そして、睡眠導入剤を処方されました。

    薬に頼ることに、少し抵抗がありました。
    依存してしまうのではないか。

    そんな不安があったからです。

    それでも――
    眠れない夜は続いていました。

    第10話(前編)終わり
        (後編)に続く
    第11話に続く

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  • 第9話(後編)

    第9話(後編)

    被害届という現実ーそして、その後

    4回目、私は再び警察署を訪れました。

    担当の警察官から、こう言われました。

    「被害届がまとまりました」

    目の前に出された書類は、
    思っていた以上のページ数でした。

    これまで提出してきた資料、
    LINEのやり取り、振込記録――

    すべてが、ひとつの「被害」として整理されていました。


    その時、私は少しだけ思いました。

    「ここまでやったのだから、何か動くのではないか」

    しかし、その後に続いた言葉は、
    想像していたものとは違いました。

    「これで一区切りになります」

    「お金は戻らないかもしれません」


    さらに、こうも言われました。

    「ネットを使った海外の犯罪は、捜査が非常に困難です」

    「犯罪者が使うIT技術に、現場が追いついていない部分もあります」

    正直、言葉を失いました。


    被害届を出せば、
    警察が動いてくれる。

    犯人を追ってくれる。

    どこかで、そう思っていました。

    でも現実は違いました。


    被害届を出しても、
    必ず捜査されるとは限らない。

    それは警察側の判断によるものだと、
    この時、強く感じました。


    それでも――

    他に方法は思いつきませんでした。

    任せるしかなかったのです。


    その後、私は自分なりに、
    お金を取り戻す方法がないか調べました。

    その中で知ったのが、

    預金保険機構 のサイトに、
    「振り込め詐欺救済法」に基づく公告が掲載されているということでした。

    凍結された口座の情報が公開されており、
    自分が振り込んだ口座が対象になっているか確認できます。


    もし対象となっていれば、
    口座に残っている残高が、被害者に分配される仕組みです。

    「もしかしたら、少しでも戻ってくるかもしれない」

    そんな期待を持ちました。


    実際に確認してみると、
    私は16口座に振り込んでいました。

    そのうち、残高が残っていたのは5口座。

    しかし――

    その金額は、ほんのわずかなものでした。

    例えば、ある口座では残高がわずか2,000円。


    そのわずかな残高を、
    複数の被害者で分配する仕組みです。

    当然、実際に戻ってくる金額は、
    さらに少ないものになります。


    正直に言ってしまえば――

    「救済」という言葉から想像していたものとは、
    大きくかけ離れていると感じました。


    制度としては存在している。
    しかし、現実に取り戻せるお金はごくわずか。

    それが、私が実際に経験した事実です。


    それでも――

    他に方法は思いつきませんでした。

    任せるしかなかったのです。


    その時、もう一つ、印象に残っているやり取りがあります。

    警察官から、こう聞かれました。

    「この事件を公表してもよろしいですか」

    公表することで、
    同じような被害を防ぐ注意喚起につながる、とのことでした。


    私は、少し考えてから答えました。

    「公表はしないでください」

    理由はひとつです。

    同じ地域に住む家族に、
    余計な心配をかけたくなかったからです。


    子供には、詐欺被害にあったことだけは伝えていました。

    もし詳細が公表されれば、
    それが自分のことだと分かってしまう。

    そう思いました。


    結果として、
    このときは公表を控えてもらうことにしました。


    警察から、1枚の紙を渡されました。

    「連絡メモ」と書かれたものです。

    ・届出日時:令和5年7月24日 17時00分
    ・犯罪事件受理番号:令和5年395号
    ・○○警察署 刑事課

    そして、備考欄にはこう書かれていました。

    「※このメモは被害届の受理証明ではありません」


    この一文が、妙に印象に残っています。


    それから――

    警察からの連絡は、一度もありません。

    一度だけ、こちらから連絡をしました。

    しかし、状況については
    「確認できない」とのことでした。


    それ以降、
    警察との関わりは一切ありません。


    今振り返ると、
    ここで一つの区切りだったのだと思います。

    「現実を受け入れなければならない段階」


    そしてこのあと、
    私は別の形で、さらに追い詰められていきます。


    次回、第10話「眠れない夜」
    被害のあと、本当に苦しかったのは“その後”でした。


    第9話(後編)おわり
    第10話に続く

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  • 第9話(前編)

    第9話(前編)

    警察への被害届ー淡々と進む現実

    詐欺だと分かったあと、
    私は弁護士に依頼し、それとほぼ同じ時期に警察へ相談しました。

    向かったのは、地元の警察署です。

    最初に対応してくれたのは2名。
    その後は1名の担当者が継続して対応する形になりました。

    おそらく刑事の方だったと思います。
    制服ではなく、私服でした。


    最初の相談では、
    これまでの経緯を口頭で説明しました。

    正直に言うと、
    「親身に寄り添ってくれる」というよりは、
    淡々と事実を確認していく、そんな印象でした。

    そして、その中で
    ひとつ、忘れられない言葉がありました。


    「そもそも、そんな大金はどこから出てきたのか?」


    一瞬、言葉に詰まりました。

    責められているわけではない。
    ただの確認だと分かっていても、
    胸の奥に何かが刺さるような感覚がありました。


    私は特別な人間ではありません。

    転職は経験しましたが、
    恵まれた職場で、
    ただひたすら地道に働き、コツコツと貯めてきたお金でした。


    それでも、
    その金額は「普通ではない」と受け止められたのだと思います。

    ここで改めて、
    自分が失ったものの大きさを突きつけられました。


    警察からは、いくつかの指示がありました。

    ・振り込んだ口座情報の提出
    ・LINEのやり取りの提出
    ・証拠となる資料の整理

    さらに、
    「口座凍結の手続きを進める」と説明がありました。


    私はすでに弁護士に依頼していたため、
    金融機関への凍結依頼は進んでいるはずだと伝えました。

    それでも警察としても、
    別ルートで凍結依頼をかけるとのことでした。


    この時、私はまだどこかで
    「もしかしたら取り戻せるかもしれない」
    そんな淡い期待を持っていたと思います。


    しかし現実は、
    そんなに甘いものではありませんでした。


    後編では、提出した資料と警察の対応、
    そして被害届が形になっていく過程についてお話しします。

    第9話(前編)おわり
       (後編)へ続く

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  • 第8話(後半)「弁護士と二次被害」

    第8話(後半)「弁護士と二次被害」

    しばらくして、弁護士から書類が届きました。

    「委託契約書が2部」

    しかし――
    私はその契約書に署名しませんでした。
    そして、送り返すこともしませんでした。

    心のどこかで、違和感が大きくなっていたのです。

    私は決断しました。

    「解約して、返金してください」

    すると――
    しばらくして、返ってきたのは

    わずか8万円。

    50万円支払って、戻ってきたのは8万円だけでした。

    私は納得できませんでした。

    「これまでに、どんな調査をしたのか?」
    そう問いただしました。

    後日、送られてきたのは――

    たった1枚の資料。

    そこには、海外の証券会社と思われる
    ドメイン情報が記載されているだけでした。

    それを見た瞬間、私は理解しました。

    「何も調査されていない」

    あるいは――
    「調査しても意味のない内容だった」

    そして、弁護士から最後に告げられました。

    「返金はしました。今後は連絡しないでください」

    さらに――

    これまでのやり取りについては
    守秘義務を守ること

    その覚書まで取り交わされました。


    その時、私はようやく気づきました。

    最初の詐欺でお金を失い――
    助けを求めた先でも、お金を失った。

    これは「二次被害」だったのです。


    ■読者の方へ

    詐欺に遭った直後――
    人は「取り戻したい」と強く思います。

    そして、その気持ちにつけ込む存在がいます。

    ・「すぐに取り戻せる」
    ・「今すぐ動かないと間に合わない」
    ・「費用は後からでもいい」

    そう言われたときは、必ず立ち止まってください。

    ■弁護士の正体が明かされた

    依頼した弁護士は、東京弁護士会に所属していました。

    その後、私はこの弁護士について調べ続けました。

    すると――
    東京弁護士会の公式ホームページに、次のようなお知らせが掲載されているのを見つけました。

    2025年12月17日付のお知らせ

    そこには、

    「詐欺の被告人となっていた刑事事件判決の確定により、
    2025年11月21日付で弁護士法第17条第1号の規定により弁護士名簿登録取消しとなりました。」

    と記載されていました。


    この一文を読んだ瞬間、私は言葉を失いました。

    自分が依頼していた相手が、詐欺で処分されていた。

    「私は、“助けを求めた相手”にも騙されていたのです。」

    第8話(後編)終わり
    第9話に続く

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  • 第8話(前編)「弁護士と二次被害」

    第8話(前編)「弁護士と二次被害」

    「お金を返してくれ!」
    それが、私の最後の言葉でした。
    ――そして、ここからが本当の地獄の始まりでした。

    私はすぐに「お金を取り返す方法」をネットで検索しました。
    すると、驚くほど多くの情報がヒットしました。

    その中で、検索上位に表示された東京の弁護士事務所が目に入りました。

    ・返金実績多数
    ・今すぐ対応すれば取り戻せる可能性が高い
    ・スピードが重要

    そんな言葉が並んでいました。

    「ここなら助けてくれるかもしれない」

    私はすぐにLINEで問い合わせをしました。

    弁護士事務所からの電話

    すると――
    その日の夜10時頃、携帯に電話がかかってきました。

    相手は落ち着いた口調で話し始めました。

    ・自分は弁護士登録している
    ・東京弁護士会に所属している
    ・振り込んだ口座はすぐに凍結が必要

    そして、はっきりと言われました。

    「これはロマンス詐欺です」

    頭が真っ白になりました。

    私は言われるまま、振り込んだ口座情報を伝えました。
    すると――

    畳みかけてくる言葉

    「すぐに口座凍結の手続きを行います」

    そう言われました。

    私は費用を聞きました。

    返ってきたのは、想像以上の金額でした。

    「被害額が大きいので、○○○万円ほどになります」

    そんなお金は、もう残っていません。

    そう伝えると――

    「クレジットカードで決済できます」

    と言われました。

    私は正直に答えました。

    「もう、お金はほとんど残っていません…」

    すると、間髪入れずにこう言われました。

    「50万円なら大丈夫でしょう」

    さらに続けて、

    ・カード決済ができる
    ・今すぐ対応しないと手遅れになる
    ・早く口座凍結が必要

    何度も、何度も急かされました。

    その時の私は――
    正常な判断ができていませんでした。

    「これで取り戻せるなら…」

    そう思い、

    50万円の支払いを了承してしまいました。

    するとすぐに、メールで支払い手続きの案内が届きました。

    そして――

    あっという間に、50万円が決済されました。

    第8話(前編)おわり
       (後編)へ続く

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