自分はなぜ、少しずつでも前を向けるようになったのか
ここまで振り返ってきて、
自分はなぜ、少しずつでも前を向けるようになったのか。
改めて考えてみると、
はっきりとした「きっかけ」があったわけではありません。
何か一つの出来事で、
気持ちが切り替わったわけでもない。
ただ、いくつかのことが重なって、
少しずつ変わっていったのだと思います。
まず一つは、時間の経過です。
あの直後は、何をしていても
頭の中から離れることはありませんでした。
後悔や自責の念ばかりが浮かび、
同じことを何度も考えてしまう。
そんな日々が続いていました。
しかし、時間が経つにつれて、
その感情が少しずつ薄れていきました。
消えたわけではありません。
今でも思い出すことはあります。
それでも、ずっとそのことだけを
考え続ける時間は、確実に減っていきました。
もう一つは、日々の生活です。
特別なことではありません。
毎日の食事や、買い物、仕事。
そうした繰り返しの中で、
現実に戻る時間が増えていきました。
何気ない日常が、
結果的に自分を支えてくれていたのだと思います。
そして、やはり大きかったのは、
家族の存在です。
変わらずそこにいてくれる人がいること。
それだけで、人は踏みとどまることができる。
第21話で書いたように、
それがどれほど大きな支えだったのか、
今になって実感しています。
ここに、もう一つあります。
それは――
体を動かすことです。
今も仕事は続けています。
まずは、この1年をしっかり勤める。
その先は分かりませんが、
今の自分にとって、体と健康が何よりも重要だと感じています。
だからこそ、以前よりも強く、
健康を維持しようと思うようになりました。
週末には、自転車に乗る。
ジムでランニングマシンを使う。
これからはプールにも通おうと考えています。
時間を見つけて、意識的に体に負荷をかける。
年齢による体力の低下は、避けられません。
それでも、そのスピードは緩やかにできる――
そう信じています。
例えば、郷ひろみさん。
70歳を超えても若々しく、パフォーマンスも素晴らしい。
日々ジムに通っている様子を見ていると、
年齢を理由にあきらめる必要はないのではないかと感じます。
自転車で坂道を登るときは、正直きついです。
息も上がり、足も重くなる。
それでも、その瞬間だけは
頭の中が空っぽになります。
無心になれる時間が、そこにはあります。
こうした日常の積み重ねもまた、
少しずつ自分を回復へと向かわせてくれている。
今は、そう感じています。
もう一つ、今になって思うことがあります。
それは――
「完全に元に戻ることはない」と
受け入れたことです。
失ったものは戻らない。
その現実から目を背けている限り、
前に進むことはできませんでした。
取り戻そうとするほど、
苦しさは大きくなる。
そう気づいてから、
少しずつ考え方が変わっていきました。
元に戻るのではなく、
この現実の中でどう生きていくのか。
そう考えるようになってから、
気持ちは少し軽くなりました。
立ち直った、と言えるのかどうかは分かりません。
今でも、後悔が消えたわけではありません。
それでも――
以前よりは、
前を向ける時間が増えてきた。
それが、今の正直な状態です。







