カテゴリー: 体験記

  • 第22話:なぜ立ち直ることができたのか

    第22話:なぜ立ち直ることができたのか

    自分はなぜ、少しずつでも前を向けるようになったのか

    ここまで振り返ってきて、
    自分はなぜ、少しずつでも前を向けるようになったのか。

    改めて考えてみると、
    はっきりとした「きっかけ」があったわけではありません。

    何か一つの出来事で、
    気持ちが切り替わったわけでもない。

    ただ、いくつかのことが重なって、
    少しずつ変わっていったのだと思います。

    まず一つは、時間の経過です。

    あの直後は、何をしていても
    頭の中から離れることはありませんでした。

    後悔や自責の念ばかりが浮かび、
    同じことを何度も考えてしまう。

    そんな日々が続いていました。

    しかし、時間が経つにつれて、
    その感情が少しずつ薄れていきました。

    消えたわけではありません。

    今でも思い出すことはあります。

    それでも、ずっとそのことだけを
    考え続ける時間は、確実に減っていきました。

    もう一つは、日々の生活です。

    特別なことではありません。

    毎日の食事や、買い物、仕事。

    そうした繰り返しの中で、
    現実に戻る時間が増えていきました。

    何気ない日常が、
    結果的に自分を支えてくれていたのだと思います。

    そして、やはり大きかったのは、
    家族の存在です。

    変わらずそこにいてくれる人がいること。

    それだけで、人は踏みとどまることができる。

    第21話で書いたように、
    それがどれほど大きな支えだったのか、
    今になって実感しています。

    ここに、もう一つあります。

    それは――
    体を動かすことです。

    今も仕事は続けています。
    まずは、この1年をしっかり勤める。

    その先は分かりませんが、
    今の自分にとって、体と健康が何よりも重要だと感じています。

    だからこそ、以前よりも強く、
    健康を維持しようと思うようになりました。

    週末には、自転車に乗る。
    ジムでランニングマシンを使う。
    これからはプールにも通おうと考えています。

    時間を見つけて、意識的に体に負荷をかける。

    年齢による体力の低下は、避けられません。
    それでも、そのスピードは緩やかにできる――
    そう信じています。

    例えば、郷ひろみさん。
    70歳を超えても若々しく、パフォーマンスも素晴らしい。

    日々ジムに通っている様子を見ていると、
    年齢を理由にあきらめる必要はないのではないかと感じます。

    自転車で坂道を登るときは、正直きついです。
    息も上がり、足も重くなる。

    それでも、その瞬間だけは
    頭の中が空っぽになります。

    無心になれる時間が、そこにはあります。

    こうした日常の積み重ねもまた、
    少しずつ自分を回復へと向かわせてくれている。

    今は、そう感じています。

    もう一つ、今になって思うことがあります。

    それは――

    「完全に元に戻ることはない」と
    受け入れたことです。

    失ったものは戻らない。

    その現実から目を背けている限り、
    前に進むことはできませんでした。

    取り戻そうとするほど、
    苦しさは大きくなる。

    そう気づいてから、
    少しずつ考え方が変わっていきました。

    元に戻るのではなく、
    この現実の中でどう生きていくのか。

    そう考えるようになってから、
    気持ちは少し軽くなりました。

    立ち直った、と言えるのかどうかは分かりません。

    今でも、後悔が消えたわけではありません。

    それでも――

    以前よりは、
    前を向ける時間が増えてきた。

    それが、今の正直な状態です。

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  • 第21話:それでも残っていたもの

    第21話:それでも残っていたもの

    失ったものは、とても大きかった

    お金だけではなく、
    これからの暮らしの安心や、
    思い描いていた老後のかたち。

    その多くを、あの出来事で手放すことになりました。

    では――
    何も残っていなかったのか。

    そうではありませんでした。

    振り返ってみると、
    一番そばにあったものに、あらためて気づきます。

    それは、妻と家族の存在です。

    被害が明らかになった時、
    正直に言えば、どう向き合えばいいのか分かりませんでした。

    それでも、妻には
    ありのままを正直に話しました。

    子どもたちにも、
    「詐欺被害にあってしまったこと」
    そして
    「これまで考えていた住まいの計画が実現できなくなったこと」
    を伝えました。

    本来であれば、
    今住んでいるこのマンションに子ども家族が住み、
    私たちは「晴耕雨読」のために購入契約をしていた家へ
    移り住む予定でした。

    その計画は、
    あの出来事によって叶わなくなりました。

    子どもからは、
    「これからの生活は大丈夫か」と聞かれました。

    私は、
    「問題ないよ」と答えました。

    本当のところは――
    不安がなかったわけではありません。

    それでも、そう答えるしかありませんでした。

    責められても仕方がない。
    そう思っていました。

    しかし、妻は違いました。

    強く責めることもなく、
    ただ現実を受け止め、
    同じ方向を向こうとしてくれました。

    子どもたちも、変わらず
    それぞれの生活を続けています。

    もちろん、何もなかったわけではありません。

    言葉にしきれない思いも、
    お互いにあったと思います。

    それでも――

    日々の生活は続いていきます。

    一緒に食事をし、
    一緒に買い物に行き、
    何気ない会話を交わす。

    そうした時間の積み重ねが、
    少しずつ、自分を現実へと引き戻してくれました。

    もし一人だったら、どうなっていたのか。

    今でも、時々そう考えることがあります。

    おそらく、ここまで立ち直ることは
    できなかったかもしれません。

    大きなことをしてもらったわけではありません。

    ただ、変わらずそこにいてくれたこと。

    それが、どれほど大きな支えだったのか――
    今になって、ようやく分かってきました。

    失ったものばかりに目を向けていた頃は、
    気づくことができなかったことです。

    これから先も、
    不安が消えることはないと思います。

    それでも。

    残っているものに目を向けながら、
    この先の時間を過ごしていく。

    それが、今の自分にできる生き方なのかもしれません。

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  • 第20話:失ったものと向き合う現実

    第20話:失ったものと向き合う現実

    幸いなことに、家は手放さずに済みました。
    今のマンションは、ずっと以前にローンを完済しました。

    そういう意味では、生活の土台は残っている。
    それは、間違いなく救いでした。

    ただ――

    マンションの暮らしは、どこか「閉じたもの」に感じることがあります。

    外に出る理由が少ない日は、
    一日中、家の中で過ごしてしまうこともある。

    そんな時、ふと思うのです。

    「庭があったらなあ」と。

    土に触れる場所があったら、
    もう少し違う時間の流れを感じられるのではないか――
    そんなことを考えます。

    ベランダに時々、植木鉢の花を置いたり、以前はブルーベリーの苗木を置いたりもしました。
    今の夜になるとベランダから空を見上げることもあります。

    振り返れば、若い頃は
    集合住宅に何の不満もありませんでした。

    むしろ、一戸建てを持ちたいと
    強く思ったことすらなかった。

    なぜなら、心のどこかで
    「いずれは晴耕雨読の暮らしをする」と決めていたからです。

    仕事を終えた後は、
    自然の中で、静かに過ごす。

    そんな老後を、当たり前のように思い描いていました。

    しかし今は、現実を受け入れながら
    この場所で、妻と二人で暮らしていくことを考えています。

    ここでの生活も、決して悪いものではありません。

    それでも――

    「もう無理だ」と完全に夢を諦めたわけではありません。

    いつか。

    もし可能であれば、
    このマンションを手放し、郊外や地方へ移り住む。

    そんな思いが、今も心のどこかに残っています。

    もっとも、この場所には
    孫たちとの思い出もあります。

    だから、本当は手放したくない――
    そんな気持ちも、同時に存在しています。

    現実と願いのあいだで、
    揺れながら過ごしているのが、今の自分です。

    それでも時折、
    ネットで郊外や地方の不動産情報を眺めている自分がいます。

    もしかしたら――という思いを、夢を
    完全には手放せないでいるのだと思います。

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  • 第19話:少しずつ回復してきた今

    第19話:少しずつ回復してきた今

    詐欺被害から、ちょうど3年が経ちました。
    あのやり取りが始まったのは、3年前の5月ごろ。
    Lineの通知に、特別な意味を感じていた頃です。

    そして今――

    苦しみは、完全に消えたわけではありません。
    正直に言えば、今でも自責の念は残っています。

    それでも、ようやく現実に向き合えるようになってきた。
    そんな感覚があります。

    とはいえ、
    「もし、あのお金があったら」と考えない日はありません。

    日々の生活は、確実に変わりました。

    スーパーでは、値段を見てから手に取る。
    妻と一緒に買い物をしながら、無意識に節約を優先する自分がいる。

    温泉に行くとしても、
    まず考えるのは「いくらで泊まれるか」です。

    最近は、ホテルや旅館の宿泊費もどんどん高くなっています。
    その中で、1万円を目安に二食付きの宿を探す。

    あるいは、曜日を選ぶ。
    シーズンを外す。

    そんな工夫をしながら、
    無理のない範囲で出かけるようにしています。

    そして――
    トップシーズンには、思い切って
    高齢者キャンプにも挑戦しています。

    形は変わりましたが、
    それでも外に出る楽しみを、なんとか残したい。
    そんな思いで過ごしています。

    老後資金のことも、頭から離れません。
    かつて話題になった「2000万円問題」。
    あの言葉が、今は現実の重さとしてのしかかっています。

    そして、仕事のこと。

    今の仕事は1年契約ですが、5年で一区切り。
    通常であれば、4回の更新が可能です。

    今年で3年目。
    あと2回は更新できるはずだと思っています。

    あとは――自分のやる気次第。

    まずは、この1年をしっかり勤めること。
    それが今の自分にできる、現実的な目標です。

    仕事も、あと1年か――
    そう考えることもありますが、
    まだ続けられる可能性があると思うと、少しだけ気持ちが違います。

    そして、何より残念に感じているのは、
    孫たちの将来に、十分な支援ができないことかもしれません。

    本来なら、少しでも力になりたかった。
    その思いは、今も変わりません。

    もう一つ、失ったものがあります。

    それは、自分の中で描いていた
    「晴耕雨読の暮らし」です。

    穏やかに、ゆっくりと過ごすはずだった老後。
    そのイメージは、あの日を境に大きく変わりました。

    ――それでも。

    こうした現実を、少しずつですが
    「仕方がないこと」と受け止められるようになってきました。

    無理に前向きになるわけでもなく、
    ただ、現実として受け入れていく。

    それが、今の自分にできることだと思っています。

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  • 第18話 あの経験を無駄にしないために

    第18話 あの経験を無駄にしないために

    ― あの時の自分に伝えたいこと ―

    ここまで、自分の体験を振り返りながら書いてきました。

    なぜ騙されるのか。
    なぜ信じてしまうのか。
    なぜ引き返せなくなるのか。

    そして、なぜ気づけなかったのか。

    書くたびに、あの時の自分を思い出します。


    ■ もし、あの時に戻れるなら

    もし、あの時に戻れるとしたら――

    きっと私は、同じように悩み、同じように迷うと思います。

    すぐに気づいて、すぐに止まる。
    そんな簡単なことではなかったからです。

    それでも、ひとつだけ伝えられるなら

    「その違和感を無視するな」

    「簡単な儲け話など、存在しない」

    そう言いたいと思います。


    ■ 失ったものは、お金だけではなかった

    今回の出来事で失ったのは、
    お金だけではありませんでした。

    ・積み重ねてきた時間
    ・信じていた気持ち
    ・自分に対する自信

    目に見えないものも、たくさん失いました。

    そしてそれは、簡単には戻らないものばかりでした。


    ■ それでも、今思うこと

    後悔は、正直あります。

    「あの時やめていれば」
    「誰かに相談していれば」

    そう思うことは、何度もありました。

    でも今は、

    この経験を無駄にしたくない。
    そう思っています。


    ■ 同じように悩んでいる人へ

    もし今、

    「少しおかしいかもしれない」

    そう感じている人がいたら――

    どうか、その感覚を大切にしてください。

    そしてできれば、

    一人で判断しないでください。

    誰かに話すことで、
    止まれることがあります。


    ■ 最後に

    この経験を、消すことはできません。

    でも――

    伝えることはできます。

    同じような思いをする人が、
    少しでも減ってほしい。

    そのために、ここまで書いてきました。


    ■ 本当に伝えたい一言

    もし今、迷っているなら

    「一度、立ち止まってください」

    それだけで、守れるものがあります。


    (第2章 終わり)

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  • 第17話 なぜ気づけなかったのか

    第17話 なぜ気づけなかったのか

    ― すべてを振り返って分かったこと ―

    「なぜ、あのとき気づけなかったのか」

    この問いは、今でも何度も頭に浮かびます。

    おかしいと思う場面は、確かにありました。
    それでも私は――
    最後まで信じてしまいました。


    ■ 違和感は、ちゃんとあった

    正直に言うと、違和感はありました。

    「少し話がうますぎるな」
    「こんなにうまくいくのか?」

    そう思う瞬間は、何度もありました。

    でもそのたびに、

    「考えすぎかもしれない」
    そうやって、自分で打ち消していました。

    今思えば――
    気づいていなかったのではなく、無視していたのだと思います。

    むしろ、
    「なんて自分はラッキーなんだ」
    そう考えていました。

    今思えば、それが一番危険な状態だったのかもしれません。


    ■ 「信じたい」が強かった

    もう一つ大きかったのは、これです。

    疑うよりも、信じていたかった。

    ここまでのやり取りや時間を、
    無駄だったと思いたくなかったのだと思います。

    だから私は、

    「大丈夫な理由」を探し続けていました。


    ■ 誰にも話さなかった

    これも大きかったです。

    私は、このことを誰にも話しませんでした。

    恥ずかしさもありましたし、
    自分で何とかしようと思っていました。

    でも今なら思います。

    誰かに一言でも話していたら――
    止めてもらえたかもしれないと。


    ■ 知らなかったという現実

    当時の私は、ロマンス詐欺についてほとんど知識がありませんでした。

    そのため、

    「よくある手口」だということにも気づけず、
    危険なサインも見逃していました。

    知っているかどうかで、
    こんなにも違うのかと感じています。


    ■ 今振り返って思うこと

    あのときの自分を振り返ると、

    特別に判断が弱かったとは思いません。

    むしろ――
    普通に考えて、普通に行動していたつもりでした。

    だからこそ怖いのだと思います。

    同じ状況になれば、
    誰でも同じようになる可能性があるということを。


    ■ 今、同じように悩んでいる人へ

    もし今、

    「少しおかしいかもしれない」

    そう感じているなら、
    その感覚は大切にしてほしいと思います。

    そしてできれば、
    一人で抱え込まないでください。

    誰かに話すことで、
    見えるものが変わることがあります。


    ■ 最後に

    この経験を、なかったことにはできません。

    でも――
    これを書いている今は、

    同じ思いをする人が、少しでも減ってほしい。
    そう思っています。

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  • エピソード1

    エピソード1

    Google広告のESTA代行サイトに注意

    — 疲れているときほど判断を誤る**

    ロマンス詐欺の記録を続ける中で、またひとつ、自分の弱さを痛感する出来事がありました。 アメリカ渡航のためにESTAを申請しようとしたとき、Google検索のトップに表示されたサイトを「公式」だと思い込み、24,200円 を支払ってしまったのです。

    公式料金は 40ドル。 その事実を知ったのは、すべてが終わった後でした。

    ■ Google検索のトップは「スポンサー広告」

    ESTAを検索したとき、最上段に表示されたサイトをそのままクリックしました。 しかし、それは 広告枠に表示される代行サイト でした。

    • URLは .gov ではなく .com
    • デザインは公式そっくり
    • 日本語で丁寧に案内
    • 料金は表示されず、決済画面へ誘導

    今なら気づけるのに、そのときは気づけませんでした。 疲れていると、人は本当に判断を誤ります。

    ■ 24,200円の内訳

    後から調べてわかったことですが、代行サイトの仕組みはこうです。

    • 公式ESTA:40ドル(約6,000円)
    • 代行手数料:15,000〜30,000円
    • 合計:24,200円(今回の請求)

    代行サイトは私の情報を使って公式に申請し、 40ドルを支払い、承認まで完了させていました。

    そのため、キャンセルは不可能。 カード会社にも相談しましたが、「消費者センターへ」と案内されました。

    ■ 自分の愚かさに呆れた

    ロマンス詐欺の後、心が弱っていたのだと思います。 注意力が落ちていると、普段なら避けられるミスをしてしまう。

    「またやってしまった」 「どうして気づけなかったのか」

    そんな気持ちがしばらく続きました。

    でも、同じように疲れている人が、 同じミスをしないための記録になるなら、 この失敗にも意味があるのかもしれません。

    ■ 読者への注意喚起

    • ESTAの公式サイトは .gov のみ
    • Google検索のトップは スポンサー広告 のことが多い
    • 日本語で丁寧なサイトほど代行の可能性が高い
    • 疲れているときは特に慎重に

    私のように、 「公式だと思い込んで高額代行に申し込んでしまう」 という人が少しでも減りますように。

    ■ 最後に

    24,200円は戻りませんでした。 でも、この経験を記録として残すことで、 誰かの注意喚起になればと思っています。

  • 第16話 「信じさせる技術」の正体

    第16話 「信じさせる技術」の正体

    ロマンス詐欺の裏側 ―

    なぜ、あそこまで信じてしまったのか。

    今振り返ると、偶然ではなかったと思います。
    あの流れは、最初からどこか“出来すぎていた”からです。

    第14話で「なぜ信じてしまうのか」
    第15話で「なぜ引き返せなくなるのか」を書きました。

    そして今はっきり思うのは――

    私は、信じさせられていたのだということです。


    ■ 「話が合う」という安心感

    最初に感じたのは、「この人、話が合うな」という感覚でした。

    やり取りをしていても違和感がなくて、
    むしろ「分かってくれる人だな」と感じていました。

    過去の話をすれば共感してくれるし、
    少し弱音を見せると、優しい言葉が返ってくる。

    その積み重ねで、気づけば私は――
    すっかり心を開いていました。


    ■ 「あなただけ」と言われたとき

    やり取りが続くうちに、こんな言葉が増えていきました。

    「あなたにだけ話している」
    「こんなに話せる人はいない」

    その言葉を聞いたとき、正直うれしかったのを覚えています。

    特別に見られている。
    そう感じると、人は疑うことが難しくなります。

    今なら分かります。
    あのとき私は――
    疑えない状態に入っていたのだと思います。


    ■ 不安になったとき、必ず支えてくれた

    順調だった流れの中で、突然トラブルの話が出てきました。

    お金が引き出せない。
    手続きに問題がある。

    「どうしよう」と不安になると、
    すぐにこう言われました。

    「大丈夫、一緒に解決しよう」

    その言葉に、何度も救われた気がしました。

    でも振り返ると――
    不安と安心を繰り返されていたのだと思います。


    ■ 考える時間がなかった

    今思うと、一番大きかったのはこれです。

    とにかく、急がされていました。

    「今日中に必要」
    「今やらないと間に合わない」

    そう言われるたびに、
    落ち着いて考える余裕がなくなっていきました。

    そして最後には、

    「やるしかない」

    そう思い込んでいました。


    ■ 振り返って気づいたこと

    すべてが終わってから、やっと見えてきました。

    ・最初に安心させる
    ・特別だと思わせる
    ・不安にさせる
    ・急がせる

    この流れが、ずっと続いていたことに。

    当時は気づきませんでしたが、
    あれは一つひとつが繋がっていたのだと思います。


    ■ これは他人事ではない

    今なら冷静に見えます。

    でもあのときの自分に、同じことを言っても、
    きっと信じなかったと思います。

    それくらい、自然に入り込んでくるものです。

    だからこそ――
    これは特別な話ではないと思っています。


    ■ 次回予告

    では、なぜそのとき気づけなかったのか。

    違和感はあったはずなのに、
    なぜ最後まで信じてしまったのか。

    次回は――
    「なぜ気づけなかったのか」

    自分なりに整理してみようと思います。

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  • 第15話 なぜ引き返せなくなるのか

    第15話 なぜ引き返せなくなるのか

    分かっていても止まれなかった理由

    「おかしい」と思った瞬間は、確かにありました。

    でも私は、その違和感にフタをしました。
    なぜなら、ここまで信じてきた自分を否定するのが怖かったからです。

    第14話では、人がどのように「信頼してしまうのか」を書きました。
    そしてその先にあるのが――

    「引き返せなくなる心理」です。

    ■ 小さな違和感は、最初からあった

    最初から完璧に信じていたわけではありません。

    ・話が少し出来すぎている
    ・お金の話が急に出てくる
    ・やり取りのどこかに違和感がある

    今思えば、いくつもサインはありました。

    でも当時の私は、それをこう解釈していました。

    「きっと自分の考えすぎだろう」
    「疑うなんて相手に失礼だ」

    こうして、違和感は見て見ぬふりをされていきます。


    ■ 投じたお金が判断を狂わせる

    一度お金を払うと、人は変わります。

    「ここでやめたら損になる」
    「もう少しで取り戻せるかもしれない」

    そう考えてしまうのです。

    本当は、この時点で止まるべきでした。
    しかし人は――

    失ったものを取り戻そうとするほど、深みにハマる

    この心理から逃れられません。

    最後にお金を振り込む、その日の朝。

    「これを振り込んだら、財産がほぼ無くなる」
    そう分かっていました。

    それでも――

    振り込まなければ、お金は引き出せない。
    何としても取り戻さなければならない。

    その思いの方が、はるかに強かったのです。


    ■ 「自分は大丈夫」という思い込み

    もう一つ大きかったのは、これです。

    「自分だけは騙されない」

    誰もがそう思っています。
    私も例外ではありませんでした。

    だからこそ、

    ・疑う自分を否定し
    ・相手を信じる理由を探し
    ・都合の悪い情報を無視する

    そんな行動を無意識に繰り返していました。


    ■ 引き返すには“勇気”が必要だった

    今なら分かります。

    引き返すのに必要なのは「判断力」ではなく、
    “勇気”でした。

    ・ここまでの時間を無駄にする勇気
    ・払ったお金を諦める勇気
    ・自分の間違いを認める勇気

    これが、当時の私には足りませんでした。


    ■ なぜ人は止まれないのか

    まとめると、人が引き返せなくなる理由は3つです。

    1. 小さな違和感を無視してしまう
    2. 投資したお金が判断を縛る
    3. 自分は大丈夫という思い込み

    この3つが重なると、人は簡単に抜け出せなくなります。


    ■ 今だから伝えたいこと

    もし今、

    「少しおかしいかもしれない」

    そう感じている人がいたら――

    その感覚は、ほぼ正しいです。

    そして、

    「まだ大丈夫」と思っているうちに止まることが、何より大切です。

    被害は、止まった瞬間にそれ以上は増えません。


    ■ 次回予告

    では、なぜ詐欺師はここまで人の心理を操れるのか。

    次回は――
    「詐欺師はどのように人の心をコントロールするのか」

    その手口の裏側を書いていきます。

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  • 第14話 なぜ人は簡単に信頼してしまうのか

    第14話 なぜ人は簡単に信頼してしまうのか

    親近感と共感の罠

    はじめに

    「この人は大丈夫」

    そう思ってしまった瞬間が、何度もありました。

    でも今思えば——
    そう思わされていただけだったのかもしれません。


    最初はただの会話だった

    最初は、本当に普通のやり取りでした。

    何気ない会話。
    天気の話や、日常の話。

    それが少しずつ増えていって、

    気づけば毎日やり取りするようになっていました


    共通点があると安心してしまう

    「自分も同じです」
    「分かります、その気持ち」

    そんな言葉をかけられると、

    一気に距離が縮まった気がする

    年齢のこと
    仕事のこと
    将来のこと

    どこか一つでも共通点があると、

    「この人は分かってくれる人だ」と思ってしまう


    人は“分かってくれる人”を信じる

    今なら分かります。

    人は、

    自分を理解してくれる人を信じやすい

    これは特別なことではなくて、

    誰でもそうだと思います。

    だからこそ、

    そこを狙われる


    少しずつ距離が近くなる

    最初から信用していたわけではありません。

    でも、

    毎日やり取りをしていると

    それだけで安心感が生まれてくる

    さらに、

    • 返信が早い
    • 気遣う言葉がある
    • 話をよく聞いてくれる

    こういう積み重ねで、

    「この人は誠実だ」と感じてしまう


    違和感よりも安心感が勝ってしまう

    正直に言えば、

    「少し変だな」と思うこともありました。

    でもそのたびに、

    それ以上に“安心感”の方が大きかった

    優しい言葉
    続いている関係
    積み重なったやり取り

    それが、

    違和感を打ち消してしまう


    信じたのではなく、信じたくなった

    今振り返ると、

    「信じた」というより「信じたくなった」

    という感覚に近いです。

    この人は大丈夫だと思いたい
    ここまでのやり取りを無駄にしたくない

    そんな気持ちが、

    判断を少しずつ鈍らせていった


    騙される仕組みは特別じゃない

    こういう流れは、

    誰にでも起こるものだと思います。

    特別に騙されやすい人がいるわけではなくて、

    人として自然な反応

    だからこそ、

    気づいたときには深く入り込んでいる


    じゃあ、どうすればいいのか

    一番大事なのはこれだと思います。

    「安心したときほど、一度疑う」

    • 話が合いすぎる
    • 優しすぎる
    • 距離が縮まるのが早すぎる

    そんなときこそ、一度立ち止まる

    それだけでも違います。


    まとめ

    人が人を信じるのは、

    悪いことではありません

    でも、

    その気持ちは利用されることがある

    だからこそ、

    「心地よさ」をそのまま信じすぎないこと

    それが大切だと思います。


    次回予告

    次回は、

    「なぜ引き返せなくなるのか」

    途中で気づいてもやめられない、
    その心理について書いてみます。

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