カテゴリー: 体験記

  • 番外編3 3年2か月たった今も、自分に問い続けていること

    番外編3 3年2か月たった今も、自分に問い続けていること

    ● 「なぜ疑わなかったのか」、その問いだけは今も終わっていません

    ロマンス詐欺の被害に遭ってから、3年2か月が過ぎました。

    時間がたてば、少しずつ忘れられる。
    傷も薄れていく。

    そんなふうに思っていました。

    確かに生活は戻りました。
    仕事も続けています。
    休日にはできるだけ身体を動かし、汗を流し、夫婦で穏やかな時間を過ごせるようにもなりました。

    それでも、心の奥には消えない問いがあります。

    「なぜ、私は疑わなかったのだろう。」

    これが、今でも私を苦しめています。

    私は、自分では慎重な性格だと思っていました。

    大きな買い物をするときも、仕事でも、何事も確認してから行動するタイプでした。

    それなのに、ロマンス詐欺では、その慎重さがどこかへ消えてしまいました。

    私は16回も、言われるままに個人口座へお金を振り込みました。

    今の自分なら、最初の一回で立ち止まるでしょう。

    「なぜ会社名義ではなく個人口座なのか。」
    「本当に証券会社なのか。」
    「なぜ疑わなかったのか。」

    そう思います。

    しかし、当時の私は、その疑問を持てませんでした。

    今振り返れば、相手は巧妙でした。

    登場人物は3人だけでした。

    香港在住という女性。

    北京在住という、その女性の叔父で著名な経済学者。

    そして証券会社の担当者。

    それぞれが役割を分担し、一つの物語を作り上げていました。

    私は、その物語を信じてしまったのです。

    もちろん、最終的にお金を振り込んだのは私自身です。

    その責任から逃げるつもりはありません。

    だからこそ、「なぜ疑わなかったのか」という問いは、今も私の中に残っています。

    このブログを書き続けてきた理由も、そこにあります。

    もし、私と同じように「自分は慎重だから大丈夫」と思っている人がいるなら、ぜひ一度立ち止まってください。

    ロマンス詐欺は、不注意な人だけが騙される犯罪ではありません。

    信頼、恋愛感情、権威、そして「今やめたら損をする」という心理を巧みに利用する犯罪です。

    私は、そのことを身をもって知りました。

    3年2か月たった今でも、答えは見つかっていません。

    それでも、この問いを書き残すことには意味があると思っています。

    この記事を読んだ誰かが、振り込む前に一度だけ立ち止まってくれる。

    それだけで、私が経験した苦しみは、少しだけ誰かの役に立つのかもしれません。

    それが、今の私の願いです。

    ➡最初から読む


    ➡最新版はこちら


    ➡Kindle版はこちら

  • 番外編2 ロマンス詐欺で警察に相談してわかったこと

    番外編2 ロマンス詐欺で警察に相談してわかったこと

    ロマンス詐欺の被害に遭ったあと、私は警察へ被害届を提出しました。

    被害額は、私たち夫婦の老後資金の大部分でした。

    当時の私は混乱し、怒り、後悔し、何とかしたいという気持ちでいっぱいでした。

    だから警察へ行きました。

    正直に言うと、私は警察に大きな期待をしていました。

    被害届を出せば何かが動くと思っていた

    警察に相談すれば、

    犯人に近づけるかもしれない。

    何か進展があるかもしれない。

    もしかしたら、お金が戻る可能性も出てくるかもしれない。

    そんな期待がありました。

    担当の刑事さんは丁寧に話を聞いてくださいました。

    資料も確認し、被害届も受理していただきました。

    警察を非難するつもりは全くありません。

    むしろ感謝しています。

    しかし、その後の現実は私が想像していたものとは少し違いました。

    その後、まったく連絡はなかった

    被害届を提出した後、警察からの連絡はまったくありませんでした。

    もちろん、捜査中のことを全て被害者に伝えられない事情もあるのでしょう。

    それは理解できます。

    それでも私は時々考えました。

    「今どうなっているのだろう」

    「何か進展はあったのだろうか」

    「本当に犯人を追っているのだろうか」

    今振り返ると失礼な考えかもしれません。

    でも当時の私は、それほど必死でした。

    老後資金の大半を失ったのです。

    そう考えてしまう自分がいました。

    自分から連絡するのも気が引けた

    警察へ問い合わせればよかったのかもしれません。

    でも私は、あまり連絡しませんでした。

    一度だけ、追加の証拠になるだろうと思い、
    Lineのやり取りのファイルとLineに送られた
    写真を提出しに行きました。それだけです。

    その後は電話もしていません。

    何となく気が引けたのです。

    忙しいだろうな。

    こんなことで電話していいのかな。

    捜査の邪魔にならないだろうか。

    私はもっと気軽に相談できる場所だと思っていました。

    しかし実際には、被害届を出した後の警察は少し遠い存在に感じました。

    敷居が高いと言うのでしょうか。

    何となく連絡しづらかったのです。

    刑事さんの言葉

    被害届を提出した時、刑事さんから言われた言葉があります。

    正確な言葉は覚えていません。

    しかし、

    「ここで一区切りつけてください」

    そんな意味の話だったと思います。

    当時の私は、

    「そんなこと言われても無理だ」

    と思いました。

    まだ返金を期待していました。

    犯人逮捕も期待していました。

    到底、一区切りなどつけられませんでした。

    今になって思うこと

    あれから時間が経ちました。

    今でも事件のことを思い出します。

    そして正直なところ、

    「たぶん難しいのだろうな」

    と思っています。

    少し寂しい気持ちもあります。

    もう少し何か連絡があったらと思うこともあります。

    でも、警察も万能ではありません。

    私が勝手に期待し過ぎていたのかもしれません。

    警察はスーパーマンではないのです。

    今になって思うのは、あの刑事さんは捜査を諦めろと言いたかったのではなく、

    「あなたの人生まで止めてはいけない」

    と言いたかったのではないかということです。

    被害届を出した意味

    私は警察に相談したことを後悔していません。

    やるべきことをやったと思っています。

    もし被害に遭った方がいるなら、警察への相談は勧めたいです。

    ただ、その後は警察だけに期待し過ぎないことも大切だと思います。

    私は返金も望みました。

    犯人逮捕も望みました。

    しかし今は、それよりも自分の人生を立て直すことに力を使っています。

    被害届を出した日から、私の人生は終わったわけではありません。

    むしろ再スタートが始まった日だったのかもしれません。

    そう思えるようになるまで、私はずいぶん時間がかかりました。

    ➡最初から読む


    ➡最新版はこちら


    ➡Kindle版はこちら

  • 番外編1 ロマンス詐欺の返金はあるのか―私がたどり着いた現実

    番外編1 ロマンス詐欺の返金はあるのか―私がたどり着いた現実

    ロマンス詐欺の被害に遭ったあと、私が最も強く願ったこと。

    それは、

    「お金が戻ってほしい」、、「お金を返してほしい」

    ということでした。

    失った金額は、私たち夫婦の老後資金の大部分でした。

    毎日、

    「何とか取り戻せないだろうか」

    「犯人は捕まらないのだろうか」

    そんなことばかり考えていました。

    警察へ相談した

    私は警察へ被害届を提出しました。

    担当の方は丁寧に話を聞いてくださいました。

    しかし、そのとき言われた言葉が今でも印象に残っています。

    「正直に申し上げると、返金は期待しない方がいいです」

    厳しい言葉でした。

    しかし、それが現実でした。

    ロマンス詐欺の多くは海外の組織が関与しており、資金も短期間で移動されます。

    犯人の特定も簡単ではありません。

    銀行口座は凍結された

    私が振り込んだ先には複数の個人口座がありました。

    銀行へ連絡し、結果としていくつかの口座は凍結されました。

    当時は少し期待しました。

    「もしかしたらお金が残っているかもしれない」

    そう思ったのです。

    しかし現実は違いました。

    口座に残っていたお金はわずかでした。

    数千円程度しか残っていない口座もありました。

    詐欺グループは入金されるとすぐに資金を移動させてしまいます。

    私のお金も、ほとんど残っていませんでした。

    被害回復金を受け取った

    その後、被害回復分配金の手続きを行いました。

    実際に私も被害回復金を受け取りました。

    しかし、失った金額から見れば本当にわずかなものでした。

    もちろん、少しでも戻ったことはありがたく思っています。

    ですが、

    「これで被害を取り戻せた」

    というものではありませんでした。

    現実には、失ったお金のほとんどは戻りませんでした。

    私が気づいたこと

    被害後しばらくの間、私は返金のことばかり考えていました。

    ネットで情報を探し、

    事例を探し、

    成功例を探し続けました。

    しかし、あるとき気づいたのです。

    戻るかどうかわからないお金を追い続けることに、自分の大切な時間や気力まで奪われていることに。

    もちろん、警察への相談や銀行への連絡は必要です。

    できることはやるべきです。

    しかし、それで全額が戻ることを前提にしてしまうと、現実とのギャップに苦しみ続けることになります。

    私が取り戻したかったもの

    私はお金を失いました。

    その事実は変わりません。

    今でも思い出すと悔しい気持ちはあります。

    それでも、私は少しずつ考え方を変えていきました。

    本当に取り戻したかったのは、お金だけではなかったのです。

    失った自信。

    失った時間。

    失った笑顔。

    そして、自分の人生そのもの。

    私は仕事を続けています。

    妻と暮らしています。

    ブログを書いています。

    こうして自分の経験を発信しています。

    失ったお金は戻りませんでした。

    しかし、私は人生まで失いたくありませんでした。

    同じ状況の方へ

    今、この文章を読んでいる方の中には、

    「返金される方法はないか」

    と探している方もいるかもしれません。

    その気持ちは痛いほどわかります。

    私も同じでした。

    だからこそお伝えしたいのです。

    できる手続きはすべて行ってください。

    警察にも相談してください。

    銀行にも連絡してください。

    しかし同時に、

    返金だけに人生を縛られないでください。

    私は、返金を待つことよりも、自分の人生を立て直すことに力を使うことを選びました。

    その選択は間違っていなかったと思っています。

    これまでの時間や失ったお金は戻らなくても、

    人生はまだ続いています。

    そして、新しい一歩を踏み出すことはできます。

    私は今、そう信じています。

    ➡最初から読む


    ➡最新版はこちら

  • 第24話:同じ状況の人へ伝えたいこと

    第24話:同じ状況の人へ伝えたいこと

    もし今、
    誰にも相談できずに悩んでいる人がいるなら。

    あるいは、
    「もしかしたら騙されているのではないか」と感じながらも、
    止まれなくなっている人がいるなら。

    まず、伝えたいことがあります。

    違和感を覚えた時点で、
    一度立ち止まってください。

    その違和感は、
    決して軽く見てはいけないものです。

    私自身、何度も違和感を覚えていました。

    それでも、

    「今さら引き返せない」
    「ここでやめたら損をする」

    そんな気持ちが強くなり、
    止まることができませんでした。

    そして気づいた時には、
    老後資金のほとんどを失っていました。

    簡単に儲かる話はありません。

    本当に大切なお金ほど、
    焦って動かしてはいけない。

    今なら、そう思います。

    そしてもう一つ。

    一人で抱え込まないでください。

    家族でも、友人でも、
    誰かに話すことで、見えるものがあります。

    自分一人では正常な判断ができなくなっていることも、
    実際にあります。

    私自身、後になってそれを痛感しました。

    詐欺被害に遭うと、
    「自分が悪かった」と責め続けてしまいます。

    もちろん、反省は必要だと思います。

    しかし――

    そこで人生まで終わってしまう必要はありません。

    失ったものは戻らなくても、
    残っているものはあります。

    時間はかかります。

    簡単には立ち直れません。

    それでも、少しずつ前を向ける日は来ます。

    私自身、今もその途中です。

    この体験を書き続けてきたのは、
    同じ被害を少しでも減らしたいと思ったからです。

    そしてもう一つ。

    「あなただけではない」と伝えたかった。

    もし今、苦しんでいる人がいるなら。

    どうか、一人で抱え込まないでください。

    ➡最初から読む


    ➡最新版はこちら

  • 第23話:あの時の自分に言いたいこと

    第23話:あの時の自分に言いたいこと

    あの時の自分に、今なら何を言うだろう。

    何度も考えたことがあります。

    「やめておけ」
    「その話はおかしい」
    「もう戻れなくなる」

    きっと、そう言うと思います。

    でも――

    本当にあの時の自分が、
    その言葉を聞き入れただろうか。

    今振り返ると、正直、自信はありません。

    最初にお金を振り込んでから、
    詐欺だと気づくまで――
    振り返れば、ほんのひと月ほどの出来事でした。

    しかし、その頃の自分は、
    すでに冷静さを失っていました。

    「信じたい」という気持ちが、
    現実を見る目を少しずつ曇らせていった。

    そして正直に言えば、
    欲に目がくらんでいたのだと思います。

    偽の証券口座には、
    利益が増えていく数字が表示されていました。

    その数字を見ながら、
    私は現実よりも、
    「期待」の方を信じてしまっていたのです。

    違和感は、確かにありました。

    税金の支払いや、
    訳の分からない振込手続きに関するメール。

    しかも、そのメールには
    差出人の企業情報すらありませんでした。

    今思えば、
    おかしいことだらけです。

    それでも――

    「ここまで来たのだから」
    「今やめたら、すべて無駄になる」

    そんな思いが、自分を止まれなくしていました。

    そして、何より――

    「自分だけは大丈夫」

    どこかで、そう思っていたのだと思います。

    今なら分かります。

    詐欺というのは、
    特別な人だけが騙されるものではありません。

    孤独や不安、焦り、期待。

    そうした気持ちの隙間に、
    静かに入り込んできます。

    だからこそ、
    あの時の自分に言いたい。

    「違和感を無視するな」と。

    うまい話ほど、立ち止まること。

    一人で判断しないこと。

    そして――
    誰かに話すこと。

    もしあの時、
    もっと早く家族に相談していたら。

    もし途中で、
    誰かに止めてもらえていたら。

    そう思うことは、今でもあります。

    もちろん、過去は変えられません。

    失ったものも戻りません。

    それでも。

    あの経験を無駄にしないために、
    こうして書き残しています。

    同じように苦しむ人が、
    少しでも減ってほしい。

    今は、そう願っています。

    ➡最初から読む


    ➡最新版はこちら

  • 第22話:それでも、少しずつ前を向けるようになった

    第22話:それでも、少しずつ前を向けるようになった

    自分はなぜ、少しずつでも前を向けるようになったのか

    ここまで振り返ってきて、
    自分はなぜ、少しずつでも前を向けるようになったのか。

    改めて考えてみると、
    はっきりとした「きっかけ」があったわけではありません。

    何か一つの出来事で、
    気持ちが切り替わったわけでもない。

    ただ、いくつかのことが重なって、
    少しずつ変わっていったのだと思います。

    まず一つは、時間の経過です。

    あの直後は、何をしていても
    頭の中から離れることはありませんでした。

    後悔や自責の念ばかりが浮かび、
    同じことを何度も考えてしまう。

    そんな日々が続いていました。

    しかし、時間が経つにつれて、
    その感情が少しずつ薄れていきました。

    消えたわけではありません。

    今でも思い出すことはあります。

    それでも、ずっとそのことだけを
    考え続ける時間は、確実に減っていきました。

    もう一つは、日々の生活です。

    特別なことではありません。

    毎日の食事や、買い物、仕事。

    そうした繰り返しの中で、
    現実に戻る時間が増えていきました。

    何気ない日常が、
    結果的に自分を支えてくれていたのだと思います。

    そして、やはり大きかったのは、
    家族の存在です。

    変わらずそこにいてくれる人がいること。

    それだけで、人は踏みとどまることができる。

    第21話で書いたように、
    それがどれほど大きな支えだったのか、
    今になって実感しています。

    ここに、もう一つあります。

    それは――
    体を動かすことです。

    今も仕事は続けています。
    まずは、この1年をしっかり勤める。

    その先は分かりませんが、
    今の自分にとって、体と健康が何よりも重要だと感じています。

    だからこそ、以前よりも強く、
    健康を維持しようと思うようになりました。

    週末には、自転車に乗る。
    ジムでランニングマシンを使う。
    これからはプールにも通おうと考えています。

    時間を見つけて、意識的に体に負荷をかける。

    年齢による体力の低下は、避けられません。
    それでも、そのスピードは緩やかにできる――
    そう信じています。

    例えば、郷ひろみさん。
    70歳を超えても若々しく、パフォーマンスも素晴らしい。

    日々ジムに通っている様子を見ていると、
    年齢を理由にあきらめる必要はないのではないかと感じます。

    自転車で坂道を登るときは、正直きついです。
    息も上がり、足も重くなる。

    それでも、その瞬間だけは
    頭の中が空っぽになります。

    無心になれる時間が、そこにはあります。

    こうした日常の積み重ねもまた、
    少しずつ自分を回復へと向かわせてくれている。

    今は、そう感じています。

    もう一つ、今になって思うことがあります。

    それは――

    「完全に元に戻ることはない」と
    受け入れたことです。

    失ったものは戻らない。

    その現実から目を背けている限り、
    前に進むことはできませんでした。

    取り戻そうとするほど、
    苦しさは大きくなる。

    そう気づいてから、
    少しずつ考え方が変わっていきました。

    元に戻るのではなく、
    この現実の中でどう生きていくのか。

    そう考えるようになってから、
    気持ちは少し軽くなりました。

    立ち直った、と言えるのかどうかは分かりません。

    今でも、後悔が消えたわけではありません。

    それでも――

    以前よりは、
    前を向ける時間が増えてきた。

    それが、今の正直な状態です。

    ➡最初から読む


    ➡最新版はこちら

  • 第21話:それでも残っていたもの

    第21話:それでも残っていたもの

    失ったものは、とても大きかった

    お金だけではなく、
    これからの暮らしの安心や、
    思い描いていた老後のかたち。

    その多くを、あの出来事で手放すことになりました。

    では――
    何も残っていなかったのか。

    そうではありませんでした。

    振り返ってみると、
    一番そばにあったものに、あらためて気づきます。

    それは、妻と家族の存在です。

    被害が明らかになった時、
    正直に言えば、どう向き合えばいいのか分かりませんでした。

    それでも、妻には
    ありのままを正直に話しました。

    子どもたちにも、
    「詐欺被害にあってしまったこと」
    そして
    「これまで考えていた住まいの計画が実現できなくなったこと」
    を伝えました。

    本来であれば、
    今住んでいるこのマンションに子ども家族が住み、
    私たちは「晴耕雨読」のために購入契約をしていた家へ
    移り住む予定でした。

    その計画は、
    あの出来事によって叶わなくなりました。

    子どもからは、
    「これからの生活は大丈夫か」と聞かれました。

    私は、
    「問題ないよ」と答えました。

    本当のところは――
    不安がなかったわけではありません。

    それでも、そう答えるしかありませんでした。

    責められても仕方がない。
    そう思っていました。

    しかし、妻は違いました。

    強く責めることもなく、
    ただ現実を受け止め、
    同じ方向を向こうとしてくれました。

    子どもたちも、変わらず
    それぞれの生活を続けています。

    もちろん、何もなかったわけではありません。

    言葉にしきれない思いも、
    お互いにあったと思います。

    それでも――

    日々の生活は続いていきます。

    一緒に食事をし、
    一緒に買い物に行き、
    何気ない会話を交わす。

    そうした時間の積み重ねが、
    少しずつ、自分を現実へと引き戻してくれました。

    もし一人だったら、どうなっていたのか。

    今でも、時々そう考えることがあります。

    おそらく、ここまで立ち直ることは
    できなかったかもしれません。

    大きなことをしてもらったわけではありません。

    ただ、変わらずそこにいてくれたこと。

    それが、どれほど大きな支えだったのか――
    今になって、ようやく分かってきました。

    失ったものばかりに目を向けていた頃は、
    気づくことができなかったことです。

    これから先も、
    不安が消えることはないと思います。

    それでも。

    残っているものに目を向けながら、
    この先の時間を過ごしていく。

    それが、今の自分にできる生き方なのかもしれません。

    ➡最初から読む


    ➡最新版はこちら

  • 第20話:老後資金は失った。それでも家は守ることができた

    第20話:老後資金は失った。それでも家は守ることができた

    家を売らずに済んだことが唯一の救い

    幸いなことに、家は手放さずに済みました。
    今のマンションは、ずっと以前にローンを完済しました。

    そういう意味では、生活の土台は残っている。
    それは、間違いなく救いでした。

    ただ――

    マンションの暮らしは、どこか「閉じたもの」に感じることがあります。

    外に出る理由が少ない日は、
    一日中、家の中で過ごしてしまうこともある。

    そんな時、ふと思うのです。

    「庭があったらなあ」と。

    土に触れる場所があったら、
    もう少し違う時間の流れを感じられるのではないか――
    そんなことを考えます。

    ベランダに時々、植木鉢の花を置いたり、以前はブルーベリーの苗木を置いたりもしました。
    今の夜になるとベランダから空を見上げることもあります。

    振り返れば、若い頃は
    集合住宅に何の不満もありませんでした。

    むしろ、一戸建てを持ちたいと
    強く思ったことすらなかった。

    なぜなら、心のどこかで
    「いずれは晴耕雨読の暮らしをする」と決めていたからです。

    仕事を終えた後は、
    自然の中で、静かに過ごす。

    そんな老後を、当たり前のように思い描いていました。

    しかし今は、現実を受け入れながら
    この場所で、妻と二人で暮らしていくことを考えています。

    ここでの生活も、決して悪いものではありません。

    それでも――

    「もう無理だ」と完全に夢を諦めたわけではありません。

    いつか。

    もし可能であれば、
    このマンションを手放し、郊外や地方へ移り住む。

    そんな思いが、今も心のどこかに残っています。

    もっとも、この場所には
    孫たちとの思い出もあります。

    だから、本当は手放したくない――
    そんな気持ちも、同時に存在しています。

    現実と願いのあいだで、
    揺れながら過ごしているのが、今の自分です。

    それでも時折、
    ネットで郊外や地方の不動産情報を眺めている自分がいます。

    もしかしたら――という思いを、夢を
    完全には手放せないでいるのだと思います。

    ➡最初から読む


    ➡最新版はこちら

  • 第19話:ロマンス詐欺で失った老後資金。不安は今も消えない

    第19話:ロマンス詐欺で失った老後資金。不安は今も消えない

    詐欺被害から、ちょうど3年が経ちました。
    あのやり取りが始まったのは、3年前の5月ごろ。
    Lineの通知に、特別な意味を感じていた頃です。

    そして今――

    苦しみは、完全に消えたわけではありません。
    正直に言えば、今でも自責の念は残っています。

    それでも、ようやく現実に向き合えるようになってきた。
    そんな感覚があります。

    とはいえ、
    「もし、あのお金があったら」と考えない日はありません。

    日々の生活は、確実に変わりました。

    スーパーでは、値段を見てから手に取る。
    妻と一緒に買い物をしながら、無意識に節約を優先する自分がいる。

    温泉に行くとしても、
    まず考えるのは「いくらで泊まれるか」です。

    最近は、ホテルや旅館の宿泊費もどんどん高くなっています。
    その中で、1万円を目安に二食付きの宿を探す。

    あるいは、曜日を選ぶ。
    シーズンを外す。

    そんな工夫をしながら、
    無理のない範囲で出かけるようにしています。

    そして――
    トップシーズンには、思い切って
    高齢者キャンプにも挑戦しています。

    形は変わりましたが、
    それでも外に出る楽しみを、なんとか残したい。
    そんな思いで過ごしています。

    老後資金のことも、頭から離れません。
    かつて話題になった「2000万円問題」。
    あの言葉が、今は現実の重さとしてのしかかっています。

    そして、仕事のこと。

    今の仕事は1年契約ですが、5年で一区切り。
    通常であれば、4回の更新が可能です。

    今年で3年目。
    あと2回は更新できるはずだと思っています。

    あとは――自分のやる気次第。

    まずは、この1年をしっかり勤めること。
    それが今の自分にできる、現実的な目標です。

    仕事も、あと1年か――
    そう考えることもありますが、
    まだ続けられる可能性があると思うと、少しだけ気持ちが違います。

    そして、何より残念に感じているのは、
    孫たちの将来に、十分な支援ができないことかもしれません。

    本来なら、少しでも力になりたかった。
    その思いは、今も変わりません。

    もう一つ、失ったものがあります。

    それは、自分の中で描いていた
    「晴耕雨読の暮らし」です。

    穏やかに、ゆっくりと過ごすはずだった老後。
    そのイメージは、あの日を境に大きく変わりました。

    ――それでも。

    こうした現実を、少しずつですが
    「仕方がないこと」と受け止められるようになってきました。

    無理に前向きになるわけでもなく、
    ただ、現実として受け入れていく。

    それが、今の自分にできることだと思っています。

    ➡最初から読む


    ➡最新版はこちら

  • 第18話 あの経験を無駄にしないために

    第18話 あの経験を無駄にしないために

    ― あの時の自分に伝えたいこと ―

    ここまで、自分の体験を振り返りながら書いてきました。

    なぜ騙されるのか。
    なぜ信じてしまうのか。
    なぜ引き返せなくなるのか。

    そして、なぜ気づけなかったのか。

    書くたびに、あの時の自分を思い出します。


    ■ もし、あの時に戻れるなら

    もし、あの時に戻れるとしたら――

    きっと私は、同じように悩み、同じように迷うと思います。

    すぐに気づいて、すぐに止まる。
    そんな簡単なことではなかったからです。

    それでも、ひとつだけ伝えられるなら

    「その違和感を無視するな」

    「簡単な儲け話など、存在しない」

    そう言いたいと思います。


    ■ 失ったものは、お金だけではなかった

    今回の出来事で失ったのは、
    お金だけではありませんでした。

    ・積み重ねてきた時間
    ・信じていた気持ち
    ・自分に対する自信

    目に見えないものも、たくさん失いました。

    そしてそれは、簡単には戻らないものばかりでした。


    ■ それでも、今思うこと

    後悔は、正直あります。

    「あの時やめていれば」
    「誰かに相談していれば」

    そう思うことは、何度もありました。

    でも今は、

    この経験を無駄にしたくない。
    そう思っています。


    ■ 同じように悩んでいる人へ

    もし今、

    「少しおかしいかもしれない」

    そう感じている人がいたら――

    どうか、その感覚を大切にしてください。

    そしてできれば、

    一人で判断しないでください。

    誰かに話すことで、
    止まれることがあります。


    ■ 最後に

    この経験を、消すことはできません。

    でも――

    伝えることはできます。

    同じような思いをする人が、
    少しでも減ってほしい。

    そのために、ここまで書いてきました。


    ■ 本当に伝えたい一言

    もし今、迷っているなら

    「一度、立ち止まってください」

    それだけで、守れるものがあります。


    (第2章 終わり)

    ➡最初から読む


    ➡最新版はこちら